不動産の売買や相続などによって、所有者が変わる際に「所有権移転登記」が必要となります。
今回は、不動産の売買や相続の際に必要となる所有権移転登記の費用や流れについて紹介させていただきます。
目次
所有権移転登記とは?
所有権移転登記について
所有権移転登記とは、不動産の売却や相続などによって所有者が変わった際に、法務局で所有権の移転を登記簿に記録し、第三者に公示するための手続きのことをいいます。
不動産登記を行うケースには以下のようなものがあります。
所有権移転登記はいつおこなう?
- 不動産売買したとき:一般的に物件の引渡しおよび住宅ローン残代金決済日
- 不動産の生前贈与したとき:贈与契約を締結し譲り渡しを行った日
- 不動産を相続したとき:法律により取得を知った日から3年以内と義務化
- 離婚による財産分与:離婚が成立し財産分与の取り決めをしたとき
不動産の売買や生前贈与で所有者が変わった場合、所有権移転登記は任意ですが、相続(相続登記)の場合は法律で義務化(取得を知った日から3年以内の申請)されています。
所有権移転登記はなぜ必要?
●速やかに所有権移転をおこなうべき理由
・第三者への対抗要件のため:契約や代金の支払いで実際の所有権が変更されていても、登記が変更されていない場合、第三者に対して所有権を主張することが出来ない可能性があります。
・二重譲渡などのリスクを防ぐため:登記申請は申請した順番で決まってしまいます。売主が同じ不動産を別の人にも売却し、相手が先に登記を済ませてしまった場合、自分の所有権を失ってしまう可能性があります。
・住宅ローンの融資手続きを進めるため:登記上の所有者が変更されていないと、銀行などの金融機関から住宅ローンを借り入れる際の担保(抵当権)が設定できず、融資手続きに支障をきたす可能性があります。
・相続の権利関係を整理するため:相続した不動産の登記移転をする前に次の相続がおこると、権利者が増え続け煩雑になってしまいます。
・売主側に税金がかかるため:不動産売買で購入した不動産は、登記変更をおこなわないと翌年以降も売主が固定資産税の納税義務者となり、書類が売主に届いてしまう場合があります。
●所有権移転をおこなわない場合のリスク
・第三者に所有権を主張できないリスク:契約や代金の支払いで実際に所有権が移っていたとしても、移転登記を行っていなければ第三者に所有権を主張できないリスクがあります。
・差し押さえリスク:登記変更していない場合、売主に借金があると債権者に差し押さえられてしまう可能性があります。
・相続登記の罰則:相続で不動産の取得を知った日から3年以内に登記変更しなければ過料(罰則)の対象となる場合があります
所有権移転登記の費用と計算方法
所有権移転にかかる費用はおもに以下の4つがあります。
- 登録免許税
- 必要書類の取得費用
- 事前調査費用(実費)
- 司法書士報酬(依頼する場合のみ)
具体的な計算式などは下記でご説明させていただきます。
1.登録免許税(税金)
登録免許税とは、土地や建物の所有者が変わった際に収める税金です。
登録免許税の額は一律ではなく「取得理由」「不動産の価値(固定資産税評価額)」「軽減措置の要件を満たしているか」などによって納税額は変わります。
登録免許税の計算方法
課税標準額(固定資産税評価額など) × 税率(軽減措置の税率)
課税標準額の計算式
200㎡以下の敷地面積の場合、住宅用の戸建て・マンション・土地は以下の式で計算できます。
土地
土地の固定資産税評価額 × 1/6
一戸建てとマンション
土地(固定資産税評価額×1/6)+建物の固定資産税評価額
※上記は固定資産税の基本的な計算方法です。住宅用地の特例が適用されることが前提で、実際の課税標準額は負担調整措置などにより異なる場合があります。
取得理由ごとの税率
| 登記の原因 | 本則の税率 | 軽減措置の税率(特例) |
|---|---|---|
| 土地(売買) | 2.0% (1,000分の20) | 1.5% |
| 建物(売買・中古住宅) | 2.0% (1,000分の20) | 0.3% (一定の要件あり) |
| 相続・法定相続 | 0.4% (1,000分の4) | 適用なし (少額土地の免税措置などあり) |
| 贈与・財産分与 | 2.0% (1,000分の20) | 適用なし |
※上記は現行法に基づく試算です。お引渡しや登記のタイミング、または今後の税制改正によって、適用される税率が変更になる場合があります。
2.必要書類の取得費用
所有権移転登記に必要な書類は、不動産売買時と不動産の相続時で異なります。
主な必要書類は以下の通りです。
●不動産の購入の場合
- 住民票の写し(約200円~300円)
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード等)
- 認め印または実印
- 売買契約書
- 住宅用家屋証明書(※減税措置を受ける場合のみ約1,300円)
●不動産の売却の場合
- 印鑑証明書(原則発行後3か月以内のもの
- 約200円~300円)
- 実印
- 売買契約書
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード等)
- 固定資産評価証明書(約300円~400円)
- 住民票の写しまたは戸籍の附票(※登記上の住所・氏名に変更がある場合のみ約200円~300円)
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
●不動産相続の場合
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・原戸籍謄本(1通450円~750円)
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票の除票(約300円)
- 相続人全員の戸籍謄本(1通450円)
- 不動産を相続する人の住民票の写し(約200円~300円)
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書(遺言書や遺産分割協議による相続時・印鑑証明1通約200円~300円)
- 遺言書(※遺言による相続の場合のみ
- 裁判所検認時は印紙代800円)
- 固定資産評価証明書(約300円~400円)
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード等)
3. 事前調査費用
事前調査では、登記情報の確認や不動産評価額の確認などをおこなう際に必要な費用となります。
こちらは、自らがおこなう場合と司法書士に依頼する場合とで大きく費用はことなります。
●事前調査の内容
- 登記情報の確認
- 公図・建物図面の確認
- 固定資産評価額の確認
自ら行う場合、取得に必要な費用実費は1000~2000円ほどですが、司法書士に依頼する場合1万円前後必要になるケースもあります。
4.司法書士への依頼費用
司法書士依頼する場合の報酬額は「依頼する司法書士ごとの基本報酬額」と「付随する業務の範囲」によってことなります。
司法書士報酬は現在、事務所ごとに自由に設定できます。また「立ち合い」「事前調査」「書類取得代行」など業務をどこまで依頼するかによっても費用がことなります。
一般的な不動産売買では約5万円~15万円といわれています。
ただし、所有権移転登記の手続きは、特別な資格がなくても可能なため、司法書士に依頼せず自分でおこなうこともでき、その場合の司法書士への依頼費用は必要ありません。
不動産の売買による所有権移転登記の流れ
不動産売買による所有権移転登記の流れは下記となります。
1. 不動産売買契約の締結
売主と買主で売買契約を結びます。このとき、売買代金や引渡日、所有権の移転手続き日などを決めます。なお、売買契約の締結日と決済・物件引き渡し日は一般的に別日でおこなわれます。
2.事前調査・必要書類の準備
登記事項証明書などで登記内容を確認し、売主の登記識別情報、印鑑証明書、買主の住民票、固定資産評価額が分かる書類などを準備します。
●必要書類、印鑑
売主側:売買契約書、登記識別情報(または登記済権利証)、印鑑登録証明書(発行後3か月以内)、固定資産評価証明書、住民票や戸籍の附票(住所変更がある場合)、実印
買主側: 売買契約書、住民票の写し、印鑑(申請方法等により必要)
3.売買代金の決済・物件の引渡し
金融機関や不動産会社の事務所などに売主、買主、不動産業者、司法書士が集まり行われます。
まず売主・買主の本人確認や登記申請に必要な書類や内容の確認をおこないます。司法書士に依頼する場合は、司法書士がこれらの確認を行います。
本人確認が完了後、買主が売買代金を支払い、売主が物件の鍵や関係書類を引き渡します。住宅ローンを利用する場合は、金融機関の融資実行なども同日におこないます。
4. 所有権移転登記の申請
決済が完了した当日に、登記申請書と必要書類を管轄の法務局へ提出し、登録免許税を納付します。申請は窓口・郵送・オンラインなどの方法があります。
また、必要に応じて抵当権設定・抹消登記も同時に申請します。
5. 登記完了・書類の受領
通常1~2週間程度、法務局での審査期間を経て登記が完了すると、買主には「登記完了証」や「登記識別情報」が交付・通知されます。
相続による所有権移転登記の流れ
相続による所有権移転登記の流れは下記となります。
1. 相続の対象となる不動産の特定
登記事項証明書や固定資産税の納税通知書などを確認し、被相続人(亡くなった方)が所有していた土地・建物を特定します。
2.相続人の確定
被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本などを取得し、誰が法定相続人(遺産を相続する権利を持つ人)に該当するかを調査・確認します。また、あわせて遺言書の有無も確認します。
3. 遺産の分け方を決める(遺産分割協議)
遺言書がある場合は、その内容を確認します。また、法定相続分どおりに相続する方法もあります。
遺言書がなく、複数の法定相続人で話し合って決める場合、遺産分割協議をおこない不動産を誰がどのように(単独名義か共有名義かなど)相続するのかを決め、その合意内容を遺産分割協議書にまとめます。
4. 必要書類の準備
法定相続人の戸籍謄本、住民票の除票または戸籍の附票、相続人の住民票、固定資産評価額が分かる書類などを準備します。遺産分割協議によって決めた場合は遺産分割協議書も用意しておきます。
5. 登記申請書による申請
登記申請書を作成し、不動産所在地を管轄する法務局へ申請します。申請手続き方法は窓口・郵送・オンラインなどがあります。
6.登録免許税の納付・登記完了
登録免許税を納付したのち法務局の審査を経て登記が完了します。法務局の審査は通常1〜2週間程度で完了し、「登記完了証」や「登記識別情報通知書」が交付されます。
まとめ
所有権移転登記とは、不動産売買や相続によって不動産の所有者が変わったときにおこなう手続きのことです。
不動産を購入したときや売却したときに必要となる書類や流れと、不動産を相続した際に必要となる書類や流れは大きく異なります。
必要書類の準備や申請をご自身で行うことも可能ですが、不備などが起こらないよう司法書士に依頼することも方法のひとつです。
不動産の売却をご検討の際はお気軽にご相談ください。





















